2023年6月、高速神戸周辺を歩きました。
「高速神戸」とは?
決してハイスピードな神戸というわけではなく、神戸を通る私鉄の一つ「神戸高速鉄道」の駅名です。
JR神戸駅もほど近いこのエリアは、港の方面に行けば神戸を代表する観光スポットがひしめきあう場所。実は、皮を一枚めくれば下町が出てくる場所でもあります。
また、行政区的には、神戸市の中心地を擁する中央区と、かつての中心地である新開地を擁する兵庫区の境目にあたります。普段行政区なんて気にして過ごしていない人がほとんどだと思いますが、神戸は区ごとに色が強く、住所を気にして家を選ぶ人も。
今回は、そんな神戸の汽水域を行ったり来たりウロウロしてみたいと思います。
案内人は芦屋市職員の筒井さん。筒井さんの関心分野であるカルチャー系の目的地をいくつか決めつつ、その間は自由にウロつこうという魂胆です。
2021年に地下道がリニューアルされたばかりの高速神戸駅西口方面で集合。構内にも区境があるのですが、ここは兵庫区のテリトリー。
さっそく地下から地上へ。大きな道路を東に渡って中央区入りします。
路地を入っていくと、昔からお商売していそうなお店と、新しいお店がほどよく混在しています。それだけで楽しく歩けるエリア。
そしてそんな路地沿いに、今日最初の目的地「NARUHESON;S(ナルヘソンズ)」がありました。
歴史に名を刻むアイドルのお店
ここはマルチアイドルの「うさべに」こと宇佐蔵べにさんがプロデュースする、月に1度のペースで1〜2週間だけ開くお店。
15歳から東京でアイドル活動をしてきたうさべにさん、自分が好きな関西・神戸を拠点にライブ以外の活動もしたいということで2020年に始めたんだそうです。アイドルがやってるお店って、個人的にはめちゃめちゃ新鮮。でも、なぜ三宮などの中心部ではなく高速神戸駅近くでやっているんでしょうか?
「都会の中心でお店を出すとふらっと来てくれる人たちに説明しきれないので、あえてクローズド感の出ているこの地域でお店をやってます。秘密基地っぽくて面白がってくれる人も多いので、ここで良かったです」
中は、こじんまりした空間の中に服や雑貨がひしめき合っています。架空の体操クラブのユニフォームみたいなTシャツやら、短パンやら、エコバッグやら。
ご近所にある老舗玉子焼きメーカーの山田製玉部さんとのコラボ商品も売ってます。これは神戸土産にもいいかも!
味のあるイラストは全てうさべにさんの手によるもの。「マルチアイドル」という肩書きは伊達じゃありません。
うさべにさんのマルチさを象徴しているのが、ZINEの存在。ZINEとは一般の書籍販売ルートでは販売されない自主制作の印刷物のことです。
今でこそアイドルがグッズとしてZINEを出すのは当たり前になってきているそうなのですが、うさべにさんはそれを何年も前からやっている先駆者的存在なのです。『日本のZINEについて知っていることすべて』という、ZINEに関するいわば歴史書のような本にも、うさべにさんのZINEが紹介されています。
そんなうさべにさんに、高速神戸周辺の偏愛スポットを訊いてみると、次のお店を教えてくれました。
・喫茶思いつき(神戸に来たきっかけの一つ!?コラボもしています)
・そば処松濤庵(NARUHESON;Sの斜め前くらいにある老舗のお蕎麦屋さん)
・お好み焼き富士(こちらもNARUHESON;Sのご近所さん)
この辺りのやや渋めなチョイスからも、やはりタダモノじゃない感があります。NARUHESON;Sに来たついでに寄ってみたいですね。
NARUHESON;Sの開店情報はInstagramからチェックできます。
NARUHESON;Sで買い物したりしてはしゃいでいたら、いつの間にか1時間くらい滞在していました。引き続き周りをウロウロします。
山田製玉部は、NARUHESON;Sから徒歩1分くらいのところにあります。宿泊施設に卸していたりが中心のようですが、ここなら、ふらっと買いに来ることもできます。
向かいの道を渡れば楠公さんとして親しまれる湊川神社。この辺りが、今回訪れた中では一番東(中央区)寄りのポイントでした。
さて、また西(兵庫区)の方へ戻っていきます。
高速神戸のネパールでほっこり
歩いていると、気になる手書き文字の張り紙のあるお店を発見。なんとも味のある文字を見つめていると、中のお兄さんがニコニコしながら出てきてくれました。
お兄さんはネパールから来られた方でした。食材を輸入・販売していて、近くに食料品店と、料理店を出しているとのこと。「ぜひ行ってみてください!」ということで、高速神戸駅から隣の新開地駅まで続く地下街「メトロ神戸」にある食料品店BEGNASの方に立ち寄ってみました。
商品が見慣れないものばかりで面白い!そして、お客さんやスタッフさんに車椅子のネパール人の方がおられたりと、さっきお会いしたお兄さんと同じようになんだか良い空気の流れるお店でした。行けて良かった!
おのおの、謎のドリンクやスパイシーな食べ物などをゲットしてテンションを上げたら、地下道をさらに新開地方面へ進んでいきます。
ご覧の通りこのメトロ神戸の地下道の壁にはアートや豆知識、視力検査、インドの九九まで様々なコンテンツが繰り広げられているのですが、案内人筒井さんが一番テンションを上げていたのがこちら。
「これは!すごいことなんですよ!」と力説してくれましたが、どれだけすごいことなのかを理解できる人がこの日のメンバーにはおらず、一同ぽかんとしてしまいました。ごめんなさい。
新開地アートひろばで圧倒される
新開地駅から商店街を通り、本日2つ目の目的地、「新開地アートひろば」に到着。元々「新開地アートビレッジセンター」として1996年にオープンした施設で、2023年4月にリニューアルオープンして名前も変わりました。
こちらでのお目当ては、「ズガ・コーサクとクリ・エイト二人展『地下道』」。地下の展示室に、なんと高速神戸駅付近の地下道が本物に忠実に再現されている展示です。
何を言っているか分からないと思うので、写真を見ていただきましょう。
展示室の中は360度、どこを見渡しても、さっきまで見かけていた地下道。でもよく見ると、全て段ボールや食品のパッケージでできています。現地で見ないと分からない迫力と狂気を感じさせます。
実は、私は以前にも神戸市長田区にあるcitygallery2320でこのユニットの展示を拝見していました。その時は、民家の中にバス停がバスごと再現されているという、これまたぶっ飛んだ展示だったのですが、それ以来病みつきに。ズガ・コーサクとクリ・エイトの展示があったら、絶対に現地に見に行くことをおすすめします!
そんなアートひろばを出て、寄り道しながら最後の目的地へと海側に向かいます。
ウロウロの真髄、小ネタ集
最終地点、アコークロー舎に到着
こんな具合で何かを見つけてははしゃぎながら移動し、2022年にオープンした「アコークロー舎」さんへ。アコークロー舎さんは、スパイスカレーの名店「ニューヤスダヤ」と同じビルなのですが、入り口はビルの裏側にあるという知る人ぞ知る古書店です。兵庫区のきわきわという、今回のウロウロのゴールに相応しい立地。
ゆっくり本を読めるスペースもあり、ただ本を買いに来るお店というよりも、本好きの友達の家に来たみたいな気持ちになれる場所。店主のさくらさんによる絶妙なセレクトに心を奪われて、何かしら買いたくなってしまう可能性も高いのですが・・・。
最後はここで思い思いに時間を過ごし、解散となりました。
ちなみに、このビルの上の階は現在空いていて、活用したい人を募集中だそうです。シェアハウスとしてちょっと手を加えながら入居するなど、色々考えられそうな空間なので気になる人は問い合わせてみてもいいかも。最高なカレー屋さんと最高な本屋さんの上で時間を過ごしていたら最高の人生が送れそう・・・(語彙を失う)
おまけ
<おまけ1>
ひとりで勝手に行動し、アコークロー舎さんからすぐ近くの「中畑商店」にも行きました。
<おまけ2>
さらに中畑商店の斜めお向かいにある駄菓子屋さんにも寄ってみました。すると、「ビリケン・ピリケン オリジナルTシャツ」なるものが売られているではありませんか!
ピリケンさんは、さっき通ってきた神社にいた神様。ビリケンさんは、この近くに日本最古のビリケンさん像があることでシンボルになっているようです。
神戸の魅力は人にある!
個人的には、神戸の「ど真ん中」は、実はこんな下町にあるんじゃないかと思います。華やか煌びやかな神戸も好きだし見てほしいけど、本当に神戸の虜になるのは、こういう下町の側面に触れた時なのではないかと。
下町でなぜ神戸の魅力を感じやすいかというと、その場所で生きている人たちと話す機会を圧倒的に得やすいからなのかもしれません。まさに「神戸の魅力は人にある」ですね。
メリケンパークなど、神戸の映えスポットに佇む「BE KOBE」も、実は「神戸の魅力は人にある」というメッセージが込められたモニュメントなんです。というわけで、神戸観光で「BE KOBE」を見た後は、ちょっと西の方にも足を運んで、その言葉を体感してみることを強くおすすめしたいと思ったまち歩きでした。
NARUHESON;S 神戸市中央区多聞通4丁目2-7 営業日・時間は公式Instagramを確認
中古携帯ショップ・ネパール食材 BEGNAS 神戸市中央区中町通4-2-23D-9メトロこうべ 営業時間:10時〜20時 定休日:なし
アコークロー舎 神戸市兵庫区西出町2丁目17−18 営業時間:13時〜19時 定休日:月〜金
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