加古川の推しを探すまち歩き

加古川の推しを探すまち歩き

2022年5月、加古川駅から出発してまちの「推し」を探すまち歩きをしました。

今回の兵庫県加古川市です。明石市と姫路市の間にあるベッドタウンで、わりと大きい都市で、臨海地域には工場もあって、ご当地グルメのかつめしが有名…。だいたいそんなイメージのまち。今回のまち案内人は、加古川出身で加古川市職員の水野さん。加古川のおすすめポイントは?と聞いてみると「…特にこれといった推しポイントがないのが推し」とのこと。うーん、本当ですか?ファンローカルと加古川を歩いて「推しポイント」を探してみます。

駅前にある百貨店ヤマトヤシキ。もともとは姫路が発祥ですが現在はこの加古川店が残るのみ。

駅前商店街の裏側に入ると楽しい

加古川駅南ロータリーに集合。なんというか、駅前が予想以上に都会的で驚きます。広くてきれい。南に向かう広い通りに沿ってベルデモール加古川という商店街が続きます。この商店街西側のマンションの間をすり抜けて、少し細い道に入ります。さっそくわくわくしてきました。

長屋を改修したカフェがありました。
上から読んでも下から読んでも「やきやきや」

水野さんおすすめのたい焼き屋さん「やきやきや」さんで、「端」がついたままのサクサクでアツアツのやつを買い食いします。このたいやき、推せる…。

注文時に「”はし”ついてていいですか?」と聞かれます。答えはもちろん”Yes”

焼き立てのたい焼きや食べようと、立ち止まれる場所を探していると、吸い込まれそうな場所を見つけてしまいました。町内会の集会所的な建物の裏手に神社らしき建物があり、その陰からちらりと見える「飲食ビルツカサ入り口」の看板。道を普通に歩いていたら、絶対に気付けない。やきやきやさんのたい焼きを立ち食いしていたからこそ発生したイベント。隠しダンジョン的な発見に、現場はしばらく湧きたっておりました。実は正しい入り口は反対側の商店街通りに面しています。

お寺の端の隙間からしか行けないビル。

そして、そこから西へ徒歩数十秒のところに、水路の上に店舗がある「かき庄」さん。大正から続き老舗のカキ料理専門店で、川岸で牡蠣料理をふるまう「牡蠣船」をイメージしているそうです。隠しダンジョンビルに続き、水上浮遊レストラン。そしてかき庄から南に振り向けば、しびれる渋さのY字路。まち歩き開始から、推せるものがどんどん出てきてます。

しれっと水路の上に建ってます。
何かが出会う予感のY字路。右側、板塀からのトタン塀の連続が最高です。

Y字路をウロウロしながら南に向かいます。この周辺は、検番筋と呼ばれており、かつて料亭が並び芸妓遊びでとても賑わっていた場所。検番とは芸妓の管理をする事務所のことだそうです。今でもわずかに残る料亭や、スナックビルにその面影を見ることができます。端々に残る栄えし時代の名残を探しながら歩いていくと、東西に伸びる寺家町(じけまち)商店街に行き当たります。

縦長タイルと縦長窓の調和。細かいタイル貼るの大変だっただろうな…と。
検番筋の往時を伝える割烹。くるりファンの聖地になったりしないんでしょうか。

商店街の中にできた「まちのリビング」

この通りは、西国街道と重なっており、江戸時代に宿場町として賑わったエリアでもあります。駅前すぐの、キレイな通りに比べると、シャッターがおりているお店も目立つ、昔からある商店街といった感じです。そんな商店街の中に、「かわのまちリビング」と書かれた黒板を出している、きれいにリノベーションされたビルがありました。1Fは「かわのまちほいくえん」で2Fが「かわのまちリビング」のようです。

1Fの保育園と一体感のある開放的なファサード。
人が集まる要素がたくさん。手書きなのも親しみやすいですね。

階段を上り、中を覗いてみると、かわのまちリビングを運営する、加古川まちづくり舎の阪口さんに対応していただくことができました。この場所は、誰でも入ってOKとのこと。そんなふらっと遊びに来れるスペースを中心に、一箱方式(色んな人が一棚ずつレンタルして自分の本を置く仕組み)の私設の図書館、有料のコワーキングスペースやミーティングスペースがあります。

アポなし訪問に快く対応していただいた阪口さん。ありがとうございました。
ほどよくアットホームでほどよくおしゃれ。地元の作家さんによる壁画も馴染んでます。
貸し棚制の私設図書館「つんどく」団地。ナイスネーミング。

2021年にオープンしたばかりですが、1Fの保育園にお迎えにきた大人や、こどもたちも利用する場所になっているそうです。商店街の中というとても便利な場所で、くつろげる仕掛けもたくさんあり(駄菓子もあります!)。自宅の近所や通勤途中にこんな場所があれば、入り浸ってしまいそうです。

△わうれしい。かわいい。
園児がこの階段をのぼってきたり、ベンチに座っている姿を想像するとほっこりします。
手書き地図はいいものですね。ニッケパークタウン(ショッピングモール)の存在感でかい。

食べ歩きしながら加古川の歴史に触れる

次は、寺家町商店街から少し海側にある、旧加古川図書館を目指します。旧加古川図書館は 兵庫県の景観形成重要建造物にも指定されている重厚な近代建築で楽しみ。その途中にあるUmiSora cafeさんには、珍しいクレープの自動販売機が設置してあります。営業中だったので、お店の中で注文してトッピングしてもらうことができましたが、ここは敢えて自動販売機で購入!

基本のカスタードクリームにしました。おいしい。

ボリューム感たっぷりのクレープに満足していると、旧加古川図書館の目と鼻の先にある、古民家を改修した「基地LAB(きちラボ)」に案内してもらえました。

のれんがかわいい!おじゃまします!

基地LABは日替わりでお店が変わる実験的なスペース。この日は小さな駄菓子屋さんが営業されており、子供たちで賑わっていました。令和になっても駄菓子は人気なんですね。基地LABを運営するメンバーの1人、増田さんにお話をうかがうと、この場所は、加古川図書館が移転して、跡地となった建物が耐震性の問題などにより、取り壊しになるかもしれないとなったことがきっかけとなり、旧図書館や周辺の魅力を発信したり、存続について考える拠点を作ろうとしたそうです。確かに、近代建築は安全性と維持コストからそのまま残すことはなかなか難しいようですが、なくなってしまえば、2度と同じものをつくるこはできません。今後の行先が気になる建物になりました。

増田さんからお話をうかがい、地域のことを考える熱意が伝わってきました。
火〜土曜日、日替わりの内容で活動されています。
駄菓子屋さんの縁側、最高ですね。その先の公園に旧加古川図書館があります。
先人の文化への意気込み感じさせる佇まいでした。
近くには加古川市の前身である加古川町時代のマークのマンホールが残っています。近くを訪れたら探してみて。

旧図書館のすぐ近くには日常の買い物の中心だった加古川廉売市場があったということです。その市場を引き継ぐショッピングセンター「れんばい」も、つい最近きれいなマンションに建て替わっていました。ひと目見たかった…。しかし、その向かいには、昔ながらながらのお肉屋さん。揚げ物メニューが豊富でワクワクします。しかし、ここはやはり王道のコロッケでしょう。水野さんによると、少し前までは1つ30円だったいうことですが、今は100円に。時代は流れていきますね。

POPがかわいいし、串カツの図解わかりやすい。
衣がカリカリで美味しそう!しかし先ほどのクレープが響いて私は食べれませんでした。無念…。

このエリア周辺は、今も年季の入った飲食店や、その跡がぽつぽつと見つかります。本町は、名前の通りかつての宿場町の中心地で、商店街ができたのも、さきほどの寺家町よりも本町が先。昭和50年代ころまでは買い物の中心地でした。さらに、水野さんも通ったという今は無くなってしまった100円バーガーを始め異常な種類の多さと安さで人気だった個人経営のハンバーガー屋さん「ピープル」の思い出も聞くことができました。行ってみたかった!

廃業したお風呂屋さんの煙突が空に映えていました。
こちらも閉店済み。発話したときのムズムズ感がすごい「トゥアイライト」
レトロなまちなみには欠かせないマルフク看板。色あせてる部分が赤色で自動補完されたら、まちあるき脳初期症状です。

令和から昭和にタイムスリップできます

さらに西に向かうと、突然未舗装の道路のまるで映画のセットのような昭和レトロなまちの風景が現れます。ここは、明治に加古川で操業した、ウールを中心とした繊維会社ニッケ(旧・日本毛織)の社宅跡(跡というか、まだ住んでいる方がいるようです)。

植栽も手入れてされていて現役感があるのが素晴らしいです。

実際にここでは、いくつか映画のロケ地となっています。簡素な板塀の和風平屋の棟、煉瓦塀の和洋折衷のお屋敷風2階建の棟、集会所として使われていたおしゃれな洋風建築、低層団地風のコンクリート造集合住宅…。一口に昭和レトロといってもバリエーション豊かな家屋がギュッと並んでおり、テーマパーク、いや、これは文化遺跡!一部はすでに取り壊されてしまっていたり、公園の遊具が撤去されていたりしますが、なんとか残って欲しいなぁとつい、祈ってしまいます。

こちらが洋館風のニッケ社宅倶楽部。往時にはダンスパーティーなどが催されたのでしょうか。
堂々たる昭和感。しびれる。
国道2号線の下をくぐります。もとはニッケ社宅への専用道だったようですが便利。
隧道の脇にあるオーパーツ化した看板。

昭和と令和をつなぐタイムトンネルのような隧道を通って、本町のもう少し探索。北側はニッケの工場跡地に立つショッピングモール「ニッケパークセンター」との旧街道の間の狭いエリアですが、昔からの細い道と水路で網目状になった路地を、うろうろしながら、最近できたレコード屋さん、ひっそりと佇む文化財指定の建物、その他変なもの(好き)を発見するのがとても楽しい。これは推せる。

コンクリート造に見えるけどレンガ造にモルタル吹き付けの文化財。ていうか階段が急すぎませんか。
裏から見るとレンガ造なのが確認できます。2階扉がトマソン化してる、隣の蔵も気になるし情報量が多い路地。

そして、また魅力的な路地の入り口を見つけたので足を踏み入れていると、なんとおしゃれなお花屋さん。SKOJ(スコーイ) FLOWER and coffeeさんは、古民家を改修して、5年ほど前からカフェ併設でフラワー教室もされているそうです。まるでオアシスのようなお店で、この日も教室に通われている方や、お客さんで賑わっていました。

路地に溢れる緑、そして向かいの側溝にかかる2連の小橋が気になる。

この日ファンローカルメンバーの友達で加古川出身の夫婦(新婚)が同行していたのですが、実はそのお二人が数日前に挙げた結婚式のお花を、こちらのSKOJさんで注文されたことが発覚。えーー、そんなことあります?!と驚いていると、水野さんもフラワーアレンジの教室にかよっている、同僚とばったり。えー。
偶然ってすごいですね…というか、そんなに色んな人を惹きつけるとても素敵なお店なんですね。

秘密基地のような、通いたくなるお花屋さんでした。

河川敷を使ったかわまちづくりを見学

この日の最後の目標地点は、加古川河川敷で開催されている「ロハスミーツ加古川」だったのですが、その手前にわいわい盛り上がっているうちにイベントの終了時間に!そのままわいわい河川敷にすべり込むとちょど蛍の光が流れてお店をたたみ始めているところでした。ぎりぎり間に合った(てない)。

イベントが終わる!急げ!(そんなに急いでない)あ、向こう建設中の橋と見せかけた給水施設がありますね(萌)。
このエリアはどうぶつの森広場という名前なのですが、動物たちは石にされていました。
クラフト系の雑貨や、お花、飲食などお店がたくさんありました(店じまい中)

加古川市は、この加古川の河川敷活用に力を入れているとのことで、様々な提案を集め、毎週のようにイベントが開催されています。今年の3月には音楽イベント「KAKOGAWA MUSIC FES 2022」が開催されて、(ただやしフラっと)参加した人が口々に「まさか、こんな大規模でかっこいいフェスだとは思わなかった」と言っているのを聞きました。これから、さらに野外イベントスペースとして使いやすいようにハード整備もされるようで、可能性をびしびし感じます。

河川敷で遊ぶことが日常になったら楽しいですね。

加古川駅からこの河川敷公園まで、寄り道せずにあるけば、ほんの15分で着いてしまいます。しかし、ちょっと道を曲がって、気になるものをみんなで探して歩くと、あっという間に2時間以上が過ぎて、時間内に目的地に辿り着けないほどでした。しかも、先に進むためにさっと通り過ぎてしまった、気になりスポットも実はいくつもありました。古いまちの面影がまだまだ残っている上に、訪れるたびに新しいことが起こっていそう。今回のまち歩きでも推しポイントがどんどん出てきましたが、探せまだまだ出会えそうな予感?!

オススメのお店情報
鯛焼工房 やきやきや
兵庫県加古川市加古川町篠原町59
営業時間:10時 ~18時
休業日:月曜日、火曜日
うみそらCafe
〒675-0066 兵庫県加古川市加古川町寺家町420
営業時間:(平日)13時~17時、(土・日)12時~17時
休業日:火曜日、金曜日
木村精肉店
兵庫県加古川市加古川町寺家町15−7
営業時間:10時 30分~17時
休業日:日曜日

記事を書いた人