筒井さんとめぐる「裏」芦屋 中編

筒井さんとめぐる「裏」芦屋 中編

2020年6月、阪急芦屋川駅から出発して南方面へ芦屋市内をまち歩きしました。

この記事は、前編 / 中編 / 後編 があり、この記事は中編です。

今回のまち歩きマップ

芦屋貴族はロバを飼う!?

商店街を抜けて進んでいくと、周りは一気に高級住宅街の雰囲気に。
「この辺りに戦前住んでた大金持ちの人が、私設の動物園を作ってたそうです。そこの息子はロバに乗って小学校に通っていたとか・・・」
知り合いの学芸員さんから聞いた話ですけど、と前置きして唐突に筒井さんが語ったエピソードが強烈だった。

やっぱり芦屋のお金持ちは半端じゃないようだ。

遅さは優しさ。まちなかの斜行エレベーター

「芦屋には斜行エレベーターがあるんですよ。もうすぐです」
斜行エレベーターって、あの斜面を登っていったり降っていったりするエレベーター?神戸でも花山東団地にあることでお馴染みの?でも、この辺りにそんな坂があるようには見えない。
到着するまで半信半疑だった。

街中に突如現れた斜行エレベーター

山手幹線と芦屋川が交差する場所にある、芦屋川の下を潜る歩行者用通路。その階段と並行して、ほんの数メートルの区間に斜行エレベーターが備えられている。
珍スポットに明らかにテンションが上がるメンバー。
これは乗らずにはおられない、ということでいざ出発!

驚きの遅さ!

めっちゃ遅い。

どのくらい遅いかというと、さっきまではしゃいでいた人たちが乗ったことを後悔するレベル。
階段を行けば30秒で行ける距離が、斜行エレベーターだと3分。もしエレベーターが乗りたい側に停まっていなければ、目的地に着くまで6分間もかかる計算だ。
筒井さん「きっと、この地下通路を作るときに、利用する方の安全とか色んなことを配慮して斜行エレベーターができたんでしょうね」
効率や費用対効果ばかりではなくて、きちんと大事なものが求められて、かつ実現するまち。こんなところでも芦屋への信頼感が増す。

芦屋の歴史を読み解きながら

この日、私たちは筒井さんから90年前の芦屋の地図データを渡されていた。

Strolyというwebサービス。古地図上に現在地がリアルタイムに表示される

「精道村全図」と書かれたこの地図、筒井さんがお友達の学芸員さんからもらったものなのだそう。
実は筒井さん自身も学芸員資格を持っていて、歴史が専門だった。そのせいか、まちあるきの案内にも奥行きがある。

2号線から東へ歩道を進んでいくと、急に分岐した細い道が現れた。
「ここ、旧西国街道が残ってる道なんです。大通りからのこの小道と階段とカレーのにおいが吸引力抜群で、来ると絶対曲がってしまうポイントですね」

吸引力が高すぎる小道
個人のお宅に付いている粋な標識。「旧西国街道の名残りです」

ここからすぐ近くの茶屋之町は旧西国街道上のお茶屋さんがあったことに由来しているらしい。今ではオープンテラスのカフェや雑貨屋さんが並び、芦屋マダムたちのティータイムにもってこいの場になっている。「茶屋の町」としての機能が昔から今に引き継がれているのが面白い。

茶屋之町。桜並木があって、春が特に楽しみ。

ここでは、横山さんおすすめのリオコーヒーに立ち寄る。
「酸味のあるコーヒーが苦手っていう人多いんですけど、リオコーヒーの酸味は全然違う。1度飲んでみてほしいです」とのこと。
私は残念ながらコーヒーが飲めないのだが、みんなその美味しさとフルーティーさに驚いていた。コーヒーが飲める人はぜひ。

リオコーヒー前で一服。良い匂いに癒される

旧宮塚町住宅・みんな農園

続いて「旧宮塚町住宅」というスポットへ。
この日は日曜日で営業はしていなかったのだが、今やこだわりのクラフト系な店舗がひしめき合う、元市営住宅をリノベーションした場所だ。

気になるお店がたくさん。

お店には入れなかったが、ここの前庭でやっている「CITY FARM CLUB」を見学することができた。
横山さんもここに自分の農園を持っている。
「プロの農家さんに教えてもらいながら挑戦できるので、失敗を避けつつ育てる喜びを味わえるのがいい」とのこと。
植物を育てては枯らしてしまう経験を持つ私にもとても魅力的に感じた。みんなでやれば、お世話も助け合いながらできそう。

横山さんが育てている農園。トウモロコシが元気に育ってる!

かつての市営住宅がこのように進歩的な使われ方をしているのは珍しいと思う。色々な事情があってどこでもできることではないのだろうけど、少なくとも芦屋はこういうことができるまちのようだ。

宮塚公園

そのまま南に下っていくと、宮塚公園に辿り着く。

マンションのエントランスのような公園名表示。
一部舗装された部分もあって、車輪付きの乗り物で遊びやすい。

ここでは、横山さんが立ち上げた団体「フライパン」の活動の一環として「あおぞら子ども食堂」を開いている。横山さんのお話も聞かせてもらった。
「もともとグラフィックデザイナーとして商業デザインをしてました。3.11がきっかけで、ソーシャルデザインに関心を持って、今はNPOで働いたり、商店街の支援活動なんかをしています。協働というと行政側に要望がいくことが多いんですけど、市民側が変わること、実際に課題を解決することを常に意識してますね。」

斜行エレベーターの地点で雨宿りする筒井さんと横山さん。みんなが横山さんみたいだったら・・・と思ってしまったり。

横山さんが自身の住む芦屋のまちで活動を本格的に始めようとしていた頃と、市役所でモヤモヤを抱えていた筒井さんが組織の外やまちに出るようになった時期が重なり、タイミング良く知り合うことができたそうだ。
一市民として思いやスキルを注ぎ、芦屋がもっと良いまちになるよう活動している横山さん。
もし自分が公務員じゃなかったら、ここまでまちの課題に目を向けて、実際に行動できていただろうか?そんなことも考えさせられた。

横山さんが一緒に来てくださったのはここまで。ありがとうございました!

宮塚公園の近くにはレベルの高いグルメなお店も多くて、まち歩きのお供は増える一方だ。

パンタイムのソフトクリームは、満面の笑みになる美味しさ!

昔はアーケードがあった!本通り商店街

芦屋を歩いていると、神戸ではよく見かける商店街のアーケードが見当たらない。商店街愛好家にとってはちょっぴり物足りないと感じていたのだが、どうやら震災の影響もあるらしい。

震災当時の様子とのあまりの違いに驚く。

ここ本通り商店街には、かつて立派なアーケードがあった。しかし、震災でほとんど全てのお店が全壊状態となり、アーケードも撤去され、区画整理が行われた。複雑な気持ちにもなるが、本通り商店街のHPを見ると、「アーケードは無くなりましたが、商店の皆さんの絆は今でも強く結ばれています。」と書かれていて頼もしい。

なぜか河童が・・・(「ファンローカル」の代表にちょっと似てる)
雨上がり、いつの間にか夏らしい青空が広がっていました。

後編へ続く
TORREFAZIONE RIO
兵庫県芦屋市茶屋之町4-12-104
営業時間:11時〜19時
休業日:火曜日
旧宮塚町住宅
兵庫県芦屋市宮塚町12-24 
営業時間:店舗による
休業日:店舗による
PAN TIME
兵庫県芦屋市茶屋之町10−6
営業時間:8時〜18時
休業日:月曜日、火曜日

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