新長田で市役所2年目職員の“もっと仲良くなりたい”人巡り 前編

新長田で市役所2年目職員の“もっと仲良くなりたい”人巡り 前編

2020年7月、神戸市長田区のJR新長田駅から南側のエリアを歩きました。

この記事は 前編 / 後編 があります。

今回のまち歩きマップ

前編「こてこてだけじゃない新長田」

市役所2年目松井さんの野望

今回まち案内してくれる松井さんは、去年から神戸市役所で働き始めたばかり。まち再生推進課という部署で、長田区南部エリアを担当しています。まち歩きの前に、「私の好きな場所や好きな人に会いに行って、新長田の良いところを皆さんにも知って欲しい。それと、私も皆さんと一緒に長田のまちをもっと知って、会う人たちともっと仲良くなれたらと思います。」と言っていた。初々しくて眩しい。はたして、このまち歩きで、松井さんの目的は達成できるのか?

今回新長田を案内してくれる松井さんと、松井さんの先輩でファンローカル代表のなべさん。

ちなみに、このまち歩きには案内人の松井さんの他に、長田に関わっている先輩職員も参加しており、色んな方向から情報が飛んできて忙しい。

気づかなけば、ただの陸橋

「JR新長田駅南のコテの前」が集合場所。何回か新長田に来たことはあったけど、コテなんてあった?と思いながら改札を通り、南口を出ると確かに「コテ」のモニュメントが。コテと知って見るとコテだけど、気づかないと抽象的な彫刻作品に見える。さっそく新長田への解像度が1ポイントあがりました。

粉物のまちらしく「こて」のモニュメント。定番の待ち合わせスポットらしい。

まずはここから少し西にある、新長田のランドマーク鉄人28号へ。駅と鉄人広場の間を通る道路を挟み、東西に建つ商業ビルは陸橋で繋がっていそうで、繋がっていない…。震災後の再開発時に、西側のビルから伸びる陸橋が、東側のビルまで接続するつもりで設計されたていたが、途中で計画が変更されたらしい。確かに橋が途中で途切れたようにに見えます。ちょっとした違和感に気づかなければただの陸橋。

途中で途切れてテラスみたいになっている。プチビアガーデンができそう。

しゃがんでもらったとの説も

鉄人28号のモニュメントは2009 年に「神戸出身の漫画家で新長田にゆかりの深い横山光輝(よこやまみつてる)さんの作品の魅力でまちを盛り上げようと、地元商店街などが中心となってNPO法人KOBE鉄人プロジェクトを立ち上げ、震災復興と地域活性化のシンボルとしての期待を託して作られた(神戸市HPより)」ものです。解説文をよく読むと、横山光輝と新長田のかかわりが微妙にぼやっとしているような気がします。実は、横山光輝は同じ神戸市でも、お隣の須磨区が出生地。うん、きっと長田にも来ていただろうから、縁は深いのだ。

鉄人は少し膝を落としたポーズをとっている。実は原寸サイズで直立させると、法律の制限にひっかかる高さになり色々ややこしくなるので、しゃがんでもらったとの説もあるらしい。「なんせここを盛り上げたい!」という、地元の熱い思いと工夫、努力で実現したプロジェクトだったことを、ひしと感じます。今では写真撮影スポットとして定着し、広場を使ったイベントも定期的に行われており、新長田のシンボルに確かになっています。

イベントができるように、ソーシャル・ディスタンス・ライン引かれていた。

ここから南に商店街の中を歩いていきます。自転車の数がハンパなく多い、駅前らしい活気を感じる商店街です。国道2号線にぶつかったところで、地下道に降りました。

地下道入り口のデザインがいかしている。まちづくりへの気合の入り方が伝わってくる。

裏からも表からも

地下道の南端には、新長田の歴史と震災からの復興を伝えるための展示スペース「ウォールギャラリー」が設けられています。普段だったら通り過ぎてしまう場所。しかし、少し展示に目を向けてみると、近代以前は、浜の駒ヶ林の漁村が長田の中心であったことや、震災前のまちづくりの活気、そして震災を境に大きくまちが変わり、復興を目指して今に至っていることがギュッと詰まっています。思わず解説を読み耽りました。まちにツッコミをいれつつ、思いっきり楽しむことをモットーに、まち歩きをしているけれど、いいことも悪いことも含めての過去があってこそ、今のまちの姿がある。それを知っておくことで、まちに敬意を持って、裏からも表からも上手く楽しめるようになる気がします。

1995.1.17を境にまちは一変した。長田を訪れたら一度立ち寄って欲しい。

アイス食べる終わるまで待ってください

地下道を進むと、復興開発ビルであるアスタくにづかの地下に続きます。テーマパークに入っていそうな、ポップなしつらえのビルの中に、昔ながらのお店が入っており、買い食いが進みます。

アスタくにづか1番館の黒田蒲鉾。ふわ天がおすすめ(なべさん談)。
アスタくにづか3番館の西村川魚店。土用を控えて鰻が手際良く捌かれていた。
同じく3番館の幸福堂。葛を使ったKUZUアイスバー美味しかった。

地下街から地上あがり、アスタくにづか4番館で「ArtTheater db神戸」を運営する、NPO法人DANCE BOX(以下db)にお邪魔して、スタッフの文(あや)さんと、田中幸恵さんにお話を聞かせてもらいました。あ、さっき買ったアイス食べ終わるまでちょっと待ってください…。

奥が田中さん、手前が文さん。たくさんおしゃべりしてくれました。

ダンスを見にこよう

dbはコンテンポラリーダンスによる文化事業や地域活動を実践している団体だ。もともとは大阪で設立され、新世界のフェスティバルゲートという複合施設内に劇場を持っていました。2007年にフェスティバルゲートが閉鎖され、活動拠点を失っていたdbに神戸市が声をかけ、この場所に拠点を持つことになったとのこと。神戸市としては、芸術の力で地域を盛り上げたいという思いもあったかもしれません。松井さんは大学生時代に、新長田を舞台としたビエンナーレ「下町芸術祭」の2017年開催の際、ボランティアチームである、こて隊に参加。dbも下町芸術祭の中心的な団体の1つとなっており、そこで松井さんとdbは出会います。そして、市役所に就職した2019年、再びこて隊に参加、dbの担当するプログラムにも関わり、お2人との距離を少しづつ縮めてきました。

dbの入り口に貼られていた下町芸術祭2017のポスター。

dbの劇場では、地域の人のカラオケ大会や、長田に住むベトナム人コミュニティのライブイベントも行われているそうです。また、まちの人も一緒に踊れる「長田妖怪でごでご音頭」を作成し、YouTubeでも公開している。”でごでご”とは、この音頭の歌詞に登場する沖縄を象徴する花「デイゴ」のこと。奄美にルーツを持つ人も多く住む長田のローカル感が伺えます。他にも、dbのこれまでとこれからの活動についてのお話を、たくさん聞くことができました。dbは劇場という場を通し、ときにはそこから飛び出し、ダンスにより地域と繋がりを深め、盛り上げています。

劇場内を見学。ダンスイベントの他に古本・雑貨市が開催されたこともある。

地域で精力的に活動をする姿に、松井さんは魅力を感じ、文さんや田中さんともっと仲良くなって、自分も関わっていきたいと思っているようでした。「イベントがあるときじゃなくても、ふらっとdbに顔を覗かせますね。」と松井さん。

文さんと松井さん、けっこう仲良さげ。

dbは様々な活動しているが、その芯にあるのは、やはりダンス。次はこの劇場にダンス公演を観にこよう。うまくいけば、コンテンポラリーダンスを踊る松井さんも見れるかもしれません。

次回は駒ヶ林へ

たくさんの楽しいお話を聞いていたら、すっかり時間が押してしまった。次の目的地に向かって、急いで大正筋商店街を通り抜けよう、としていたところ、お肉屋さん(そこそこ離れている)から、「おいしいコロッケどう?!!!」の声。この誘惑には抗えない。5分ほど待って千鶴屋精肉店の揚げたてのコロッケいただきました。急ぎ食べ歩きながら商店街を抜けて、新長田の南エリア、駒ヶ林へ。

揚げたて黄金色!誘惑に負けて良かった。
今回は通り抜けるだけだったけど、商店街を散策するだけでも1日楽しめそう。
道中で出会ったレンガタイルの壁と瓦葺きの庇が洒落てるお風呂屋さん。
「六甲びっくり市」気になりすぎるし、鳥居の数が多すぎる。
〉次回、後編「路地をぐるぐる歩いて海に出た駒ヶ林」へ続く!
オススメのお店情報
黒田蒲鉾 新長田店
神戸市長田区腕塚町5丁目アスタくにづか1番館南棟B1
営業時間:9時 ~18時半
休業日:水曜日
幸福堂 新長田店
神戸市長田区久保町5丁目1-1アスタくにづか2番館B1
営業時間:10時 ~19時
休業日:水曜日
千鶴屋精肉店
神戸市長田区二葉町5-1-1フレール アスタ二葉1F
営業時間:10時 ~19時
休業日:月曜日

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